リリカルなのは SS
リリカル昔話
昔々、あるところにクライドとリンディというお爺さんとお婆、
(ギロリ)
………もとい、見目麗しい夫人がおりました。
ある日、クライドは異世界へ闇の書の捜索に、リンディは川に洗濯に行きました。
リンディが川で洗濯をしていると上流からドンブラコドンブラコと大きな桃が流れてきました。どうでもいいですが、ドンブラコって凄い擬音語ですよね。
リンディは嬉々して、桃を家に持ち帰ると夫の帰りも待たずに「えいっ!」と桃を切りました。
すると、どうでしょう。なんと桃から赤ん坊が出てきました。リンディはもちろん、目を見開いて驚きました。
「た、食べる部分が少なくなっちゃったわ…………」
そういう理由でですか。
それから桃から生まれた赤ん坊は、桃から生まれたこととは関係なくクロノと名づけられすくすくと成長していきました。ちなみにクライドはクロノが三歳の時になくなりましたがこの昔話の展開とは関係ないので割愛です。
ある日、クロノは海鳴市を荒らす鬼の話を聞き、退治に行きたいと母に申し出ます。リンディは桃から生まれたとは言え、わが子同然で育ててきたクロノの決意が固いものと知るとそれを許しました。
「ではこれを持って行きなさい。父さんの形見のデバイスL」
「母さん、それは色々とまずいです」
「……L2Uかもしれないでしょ?」
「それ形見じゃないでしょう!!むしろそっちの方がまずいです!!」
リンディは残念そうにそれを仕舞うと、普通にS2Uを渡しました。
「あとはこれを」
そう言って、何かがつまった袋をクロノに渡します。
「食べ物みたいですが、キビ団子ですか?」
「ううん、翠屋さんのシュークリームよ。とっても美味しいの♪」
自分の手作りで送り出す気まるでなしです。
「………美味しいのよ」
「残念がるくらいなら自分の腹に収めてください!!」
ともかくまあ、クロノは鬼退治にでかけました。
クロノが鬼が島に向かう道中、誰かがクロノに話しかけてきました。それはなのはでした。
「クロノ君、クロノ君。お腰につけた翠屋のシュークリーム、一つ私にくださいな」
君の家ののシュークリームなんだから普通に食べられるだろう、というツッコミを入れそうになりましたがこれは昔話でなのはと翠屋の関係は物語の支障になりかねないので黙ってクロノはなのはにシュークリームを上げました。旅に出る前より、袋の中身が半分以下になっていますが何かあったのでしょうか?
クロノがなのはにシュークリームを上げると、また誰かが声をかけてきました。フェイトとはやてです。
「クロノ、私も食べたいな」
「クロノ君、私にもくれへん?」
そうしてクロノはシュークリームで三人の少女を家来にしました。
はい、そこ。邪な妄想を抱かないように。これは清く正しい昔話です。
クロノと三人の家来(だから邪な以下略)は海に辿り着くと船を漕いで鬼が島に向かいます。
その途中、向こうで闇の書の闇が暴れていたりしましたが、鬼退治とは関係ないのでスルーです。無視られて叫び声がちょっと寂しげな感じです。
無事、鬼が島に辿り着いたクロノ一行ですが、鬼が島なのになんだかそれっぽくありません。ぶっちゃけると、時の庭園っぽいです。
「来たわね」
クロノ一行を見下ろせる場所に人影が現れます。
「鬼が島の鬼とはこの私よ!プレシア・テスタロッサよ!!」
何故か長曾我部っぽい言い回しで登場したのは、鬼の頭領であるプレシアです。このネタをわかってくれる人がいるのか心配になる中、プレシアが号令をかけます。
「私の邪魔はさせない!私はここからアルハザードに行く!!」
ジュエルシード満載の時の庭園ならともかく、鬼が島からどうやっていくつもりなのでしょうか。それとは関係無しにゾロゾロと手下の鬼達が姿を現します。鬼と言いつつ、中世の騎士甲冑のような外見ですが気にしてはいけません。でかいキャノン砲を背負った大型もいますが、これはあくまで昔話に出てくる鬼です。決して傀儡兵ではありません。
戦闘が始まります。激しい戦いでしたが割愛します。閃光が飛び交ったり、「君は動力炉を叩け!」とか何故鬼が島に動力炉があるのと言うツッコミの前になのはが動力炉を潰したり、フェイトが母親に言葉を伝えに行ったり、はやてがその時は本編に出てなかったので好き勝手に暴れたりと、その様子がとても昔話らしくなかったからではありません。
そんな激しい戦闘は、プレシアが膝を屈したことで終わりを告げました。
「ふっ、鬼はやられる定め、ね」
またも長曾我部っぽい言い回しです。だからネタがわかる人がいるのでしょうか?反応が極端に分かれそうです。
トドメを待つプレシアでしたが、クロノはプレシアに向けたS2Uを引きました。
「殺さないの?」
「これ以上悪さをしないと言うなら、そこまでするつもりはない」
「甘いのね。………でもいいわ。その甘さに免じて引くとしましょう」
そう言って、改心したプレシアはA‘S十一話の時のような優しいお母さんの笑顔になりました。
「さあ、その証として鬼が島の宝を持っていくといいわ」
プレシアから鍵を貰うとクロノ達は宝物庫に向かいました。
「どんな宝物があるんだろ?」
「やっぱり、魔法アイテムかな?」
「金品やと、家の食費が助かるんやけど」
家来の三人が想像を膨らませる中、クロノは宝物庫の扉を開けました。
「「「「………………」」」」
クロノ達は唖然としました。そこにあったのは、金銀財宝ではなく。
「こんにちは、アリシア・テスタロッサだよっ」
五歳くらいの幼女でした。まあ、確かにプレシアの宝には違いありません。
「母さんに言われたので今日からお世話になります。よろしくね、クロノお兄ちゃん」
そう言って、クロノの腰にタックル同然で飛びつきました。
「ア、 アリシア!?何してるの!?」
「だって、私はフェイトのお姉ちゃんでフェイトはクロノお兄ちゃんの妹でしょ?だから、私のお兄ちゃん。あれ、姉で妹って矛盾してるね?」
どこの白いあくまを気取るつもりでしょうか。
「こ、こら!クロノ君から離れるんや!」
「やだ。私、男の人に抱っこしてもらいたかったんだ」
「抱っこは私の属性やー!!」
はやての言葉にもアリシアはクロノから離れません。業を煮やしたなのはがレイジングハートをエクセリオンモードにしてアリシアに差し向けます。
「きゃ!?」
「いくらなんでもそれはないだろう!鬼か、君は!?」
「……鬼でいいよ。鬼らしいやり方で話を聞いてもらうから」
「変わってる!セリフ変わってる!そして僕も巻き込まれるんだけどそれ!?」
そんな言葉も聞く耳持ちません。何故ならなのはは話を聞くのではなく聞かせようとしているからです。相手の言い分なんて知った事ではありません。
空を貫く桃色の閃光が鬼が島から奔ります。響き渡る悲鳴と怒声。雷も落ちてきました。空に浮かんだ魔法陣から放たれる白い光はそれこそ世界の終焉を告げているかのようです。
こうして、鬼が島は新たな鬼が誕生し、幼女を腰に抱きつかせたまま鬼が島から逃げたクロノを追うために進攻を始めました。管理局に守護騎士、遺跡発掘の一族の少年など様々な追っ手と戦いながら逃げる『娘連れクロノ』の幕開けです。それ時代劇じゃんというツッコミは却下です。
何故ならこれは昔々のお話だからです。
めでたしめでたし