リリカルなのは SS

                       リリカル行進曲

 ドン、ドンと大きな花火がいくつも上がる。見上げた空はこれ以上ないくらい快晴だった。

「さー!始まりました!海鳴市を舞台に時空管理局がお送りする『リリカル行進曲、それ行け大運動会』!!ところで、管理外世界でこんな大会を開いて大丈夫なのでしょうか?解説のリンディ提督」
「ええ、そういうお話なので好きにやっちゃってください」
「ご都合主義なお返事ありがとうございます!あ、申し遅れました、司会進行、及び実況は私エイミィ・リミエッタ、解説はリンディ・ハラオウン提督でお送りさせて頂きます!それでは早速選手の入場でーす!!」

 大きな歓声と共に会場に最初のチームが入場してくる。

「まず、最初に入場したのは『リリカルヒロインズ』!先頭を歩くのはその砲撃で恐れられる管理局の白い悪魔、高町なのは!次に続くのは本日は機動性を重視しスパッツ、ゲフンゲフン。もといソニックフォームで登場のアースラの妹アイドル、フェイト・T・ハラオウン!!最後にいつからこうなった!?関西キャラの宿命からは逃れられない夜天の王、八神はやて!!!」

 大歓声と共に迎えられながら、非常に複雑そうな顔で入場するリリカルヒロインズ。

「次に入場するのは『ヴォルケンレディース』!!その胸囲は脅威!胸にミサイルを持つ騎士、烈火の将シグナム!!近所のお爺ちゃんお婆ちゃんのちびっ子アイドル騎士、紅の鉄騎ヴィータ!ウッカリ振りはまだまだ健在!永遠の奥様騎士、風の癒し手シャマル!!」

 三人とも、こめかみに軽く血管を浮き上がらせながら入場するヴォルケンレディース。

「さらに続いて入場したのは『連合ダンディーズ』!打ち立てたフラグは数知れず!近づくな、巻き込まれるぞ!いい加減警告マークでも貼りやがれ!時空管理局執務官クロノ・ハラオウン!!残された最後の聖域、リリカルなのは最後の良心!!盾の守護獣ザフィーラ!!その汚名が返上させる日は来るのか!?淫獣ユーノ・スクライア!!」

 抗議の声を上げようとするユーノをクロノとザフィーラが押さえつけながら入場する連合ダンディーズ。

「そして最後に出場するは時系列もなんのその!ゲスト枠というか数合わせ的に急遽参戦『エレナと愉快なナイツ達』!!先頭はもちろんこの人。報われないいい女エレナ・エルリード!!苦労人だけどそうは見えない軽い男!ナイツのフォックス・スターレンス!!語らずの盾の岩石男!!ナイツのマキシム・アイオーン!!」

 紹介を特に気にした様子もなく入場するエレナと愉快なナイツ達。

「以上4チームをもって第一回『リリカル行進曲、それ行け大運動会』を開催致しまーすっ!!!!!!!」

 沸き起こる大歓声。ところでこの大観衆はどこの世界の住人でどっから沸いてきた、と出場選手のほとんどが思った。

「え〜、それでは開幕式に移りたいと思いますが、描写するほどのこともないので終わった物とします。開式の言葉を言う予定だったギル・グレアム元提督、準備運動を行うはずだった高町士郎氏、来賓挨拶をする予定だった時空管理局長等々、ありがとうございました!!」

 そのためだけに呼ばれたのに、出番をカットされた面々はしょぼくれた様子で観衆の拍手を受け止めた。ただ、士郎だけは気にした様子もなく桃子といちゃついている。

「さて、全部カットするのはあんまりなので選手宣誓だけは行わせて頂きます。選手代表『連合ダンディーズ』クロノ・ハラオウン!!」
「………なあ、この文面何か間違っていないか?」
「間違ってない間違ってない。さ、さっさとやっちゃって」

 促されクロノは予め言うように言われた不安の残る宣誓を告げる。

「宣誓!我々はスポーツマンシップにのっとり『魔術師』として正々堂々戦う事を誓います!!」

 ここに第一回『リリカル行進曲、それ行け大運動会』の幕が切って落とされた。







「まずは各チームの応援団を見てみましょう」

 エイミィが最初に視線を向けたのはリリカルヒロインズの応援団だ。

「フェイトー!!頑張れー!!」
「なのはー!しっかりやんなさいよー!!」
「はやてちゃん、気をつけてー!!」

 アルフは鉢巻を締めて応援団旗を振る。アリサとすずかもチアガール姿でボンボンを振っている。

「実に華やかですね」

 次に視線が向けられたのはヴォルケンレディースの応援団。

「しっかりやりなさいー!」
「シグナム先生―!負けるなー!」
「ヴィータしゃんー!がんばじゃぞぉぉぉぉぉぉっ!!」
「シャマルさーん!無理しちゃだめよー!!」

 レティ提督を筆頭に、道場の門下生、爺ちゃん婆ちゃん、近所の奥様方と随分と年齢層が広い応援団がいた。

「なんか随分とチグハグな応援団ですね…………」

 それから連合ダンディーズの応援団を見る。

「頑張ってくださいー!!」
「ファイトですよー!!」

 ランディとアレックスがいた。

「あ、あれ!?何の描写もないのは何故!?それとチームの人達も背を向けてるし!!おーい!!」
「なんですか!?その、後ろからでもわかるくらい盛大に肩を落としての溜め息は!?せめてこっちむいてー!!」
「ノーコメントで」
「「そんなっ!?」」

 最後に残ったエレナと愉快な仲間達を見る。

「隊長―!!ご武運を祈りまーす!!」

 大きく手を振っているクレアの姿があった。

「………お前か。よりによって」
「しょうがないじゃないですかー。私達オリキャラなんですし。他に人選がなかったんですよ」
「まあいい。勝手にしろ」
「あ、待ってください隊長」
「なんだ?」
「どうぞこれを。お守りです。今度はなんと肉体強化も成功したヴァージョンアップしたタイプでその名も」
『Pile Banker』
「あーれぇぇぇぇぇぇぇぇぇー………………」

 吹っ飛ばされたクレアは青空に消えた。






「えー……、のっけから色々ありましたが競技に移りたいと思います。第一競技クロスカントリーです。コースは聖祥学園をスタートし、商店街を抜け、公園で折り返してなのはちゃんの通学路を行き、ゴールである聖祥学園に再び戻ってくるというコースになっています。またリリカルルールとして競技中は殺傷設定にする等の禁止事項を犯さない限り魔法の使用は許可されています」
「コースには鉄アレイや木刀など様々なアイテムが放置されていますのでそれをうまく使うことが勝利のポイントですね」
「それでは出場選手の紹介です」

 リリカルヒロインズからはフェイト、ヴォルケンレディースからはヴィータ、連合ダンディーズからはザフィーラ、エレナと愉快なナイツ達からはフォックス選手の出場だ。

「この面子を見てどう思いますリンディ提督?」
「妥当な所ですね。リリカルヒロインズとエレナと愉快な仲間達はチーム最速選手を。残り二チームはチームリーダーを温存する形を取っています」

 出場選手がスタートラインに並ぶ。いずれも引き締まった表情でこれからの協議に臨もうとしている。

「負けません」
「やるからには負けねー」
「加減はせん」
「ま、速さ勝負なら俺が勝つで決まりだな」

 開始を目前にし、会場と共にボルテージが上がってくる実況のエイミィ。

「さー、選手達が気合を入れる中ゆっくりとスタートの合図をかけるのは今回の出場を見送ったナイツのロッド・ブラム!」
「………」

 ライン際に立ったロッドがヒドラの銃口を真上に上げる。応援団も兼ねているのか、いつもの黒いコートが学ランになっており、ヒドラの先端に『頑張れ、エレナと愉快な仲間達!』という旗がくくられている。

「それでは無口なロッドさんは掛け声をしてくれないので、私がかけたいと思います!」

 そう言うとエイミィははしゃいだ顔から一変、ブリッジで情報処理を行う時の真剣な顔になった。

「位置について、よーい…………」

ドンッ!!

 ヒドラから響いた銃声がスタートを告げた。








 一番にスタートを切ろうとしたのはエレナと愉快な仲間達のフォックス。

「おっ先、ってぐぼぁっ!?」

 だがスピードスターを起動させ、逃げ切り体制に入ろうとしたところを三方からいきなり強襲される。

「あーっと!?フォックス選手、いきなり他のチームから一斉に襲いかけられた!!防御魔法を使えない身では一たまりもありません!!」
「一度先を行かれたら追いつけませんから。それをわかっているから真っ先に潰しにかけられましたね」

 フォックスがボロ雑巾になったところで、改めてスタートを切る三人。

「フォックス選手を潰し終えた三選手。先頭を行くのはフェイト選手!さすがスパッツ、ゲフン、ソニックフォーム!明らかな速度差を見せつけ徐々に差をつけていく!!」
「フォックス選手がいなくなった今機動性では右に出るものはいませんからね。ヴィータ選手もザフィーラ選手も厳しいところです」

 だが、そのフェイトの先行もコースが商店街に差し掛かったところで状況が変わった。

「さあ、やってきました海鳴商店街!いつもなら様々な人で埋め尽くされる街路ですが今日は選手達のために道を空けられています。観客も被害に合うといけないので皆建物の中から観戦です。ところで道端に色々と放置されていますがあれは………?」
「競技前にいったアイテムです。うまく活用して妨害してください」

 先頭を走るフェイトは所々に落ちているアイテムに目もくれず先を急ぐ。このまま逃げ切れれば勝ちなのだ。アイテムを拾う間も惜しかった。
 だが、その判断は間違いだった。

「っ!?」

 突如背後から風切り音が迫る。咄嗟に横に避けるとその横を鉄アレイが横切った。

「あーっと!ヴィータ選手の投擲だ!!落ちている物を手当たり次第に拾ってフェイト選手に投げつけているー!!」
「これはフェイト選手のミスですね。先に拾っておけば相手は投げる物がなくなると言う事を考えていなかったようです」

 リンディの冷静な解説を余所に噴火したような勢いでアイテムを投げ続けるヴィータ。

「おらおらおらー!!!」
「ヴィータ選手、凄い投げっぷりだ!!あ、流れ弾が槙原動物病院に直撃だー!!ごめんなさい!!修理費は出しますから!!」
「そういえば、一期で直すのにかかった修繕費って自腹だったんでしょうか?犯人捕まらなかったし」
「「ギ、ギクッ!!」

 フェイトは高速で迫る凶器を避け続ける。しかし、その分差を見せ付けていた速度は明らかに落ちていた。機動性が上がった代わりに防御力が著しく下がるソニックフォーム。その形態で一撃でも被弾すれば致命傷になりかねないのだから致し方なかった。

「くっ!!」

 その二人を余所にザフィーラは後ろを振り向かずに走り続ける。時折、ヴィータの放った流れ弾が向かってくるが防御魔法を展開して叩き落す。その中で冷静に自分が拾うべきアイテムだけを拾ってフェイトとの差を詰めていく。

「ザフィーラ選手。落ちているジュースを拾って体力を回復させています。おっと?似合いもしない星型のステッキを拾ったぞ?なんのつもりだ?」
「あのステッキは一度振るうと能力が上がる効果があります。しっかりとアイテムの情報を理解している証拠ですね。」

 ザフィーラがステッキを振るう。瞬間、ザフィーラが光に包まれた。

「こ、これはっ!?」
「ただし、元ネタと違うのは副作用で衣装が変わります」

 驚愕するザフィーラ。そして晴れた光から現れたザフィーラは二足歩行する狼形態でスペシャルポリスのボスっぽい衣装になっていた。無論、サングラスも忘れない。

「これは衣装が変わったというより変身だぁぁぁぁぁ!?ザフィーラ選手、なんていうか、ドギー・ザフィーラという感じになりました!!しかし変身したのに変身前の姿になるとはこれ如何に!?」
「ところで小さな日常達4でバニングスマスターに対するツッコミがあまりなかったのは何故なんでしょうね?」

 そのような状況が続いたまま公園を折り返し、一位フェイト、二位ザフィーラ、三位ヴィータという順位でゴールである聖祥学園に差し掛かっていた。
 そこで勝負に出たのはフェイトだった。

「バルデッシュ!!」
『Yes,sir』

 言葉と共にカートリッジがロードされる。背後を窺い、ヴィータがアイテム切れを起こしたのを確認し、ここで一気に突き放そうというのだ。ザフィーラがそれを察してステッキを投げつけるが一歩遅かった。
 ブーストされた魔力がその速度を限界まで引き上げる。あ、とヴィータが言う間もなく距離が引き離された。

「あー!速い速い速い!!圧倒的な速度だ!ヴィータ選手とザフィーラ選手が何も出来ないまま選手の間が開いていく!!もうゴールまで直線!!アイテムも落ちていません!!これももう決まったかー!?」

 そのエイミィの実況は観客の気持ちを代弁していた。観客だけではない。参加している選手も観戦している選手も誰もがそう思っていた。
 ただ、一人を除いて。

「え……………?」

 感じ取れたのは気配のみ。いや、気配を感じられただけでも僥倖というべきか。だが、いずれにしてもそれまで。気が付けば視界には青い空が広がり。

「あうっ!?」

 フェイトはゴールを目前にして地面に叩きつけられていた。

「あ…………?こ、これは一体!?」

 突如吹き飛ばされたフェイトにエイミィは何が起きたのかわからず間の抜けた声を上げる。エイミィだけではない。フェイトに注目していた全ての者がエイミィと同じ心境だった。

「ゴール………だな」

 そこに男の声が響いた。
 はっとなって皆がそちらに注目する。それはゴールラインを超えた先。そこにその男はいた。
 金属靴から盛大に白煙を噴出させ、王者の纏ったマントのようにゴールテープを靡かせる男の姿があった。

「な、なんとおおおおおっ!?逃げ切ったかと思ったフェイト選手を吹き飛ばし、ゴールしたのはスタート直後にリタイアしたかと思われたエレナと愉快なナイツ達のフォックス選手!!案外タフ、とは隊長であるエレナ選手の言葉ですがこれはタフというレベルではない!!早い!!復活が早すぎる!!色んな意味で早い男フォックス・スターレンス選手が一位でゴールだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!」

 誰も予想だにしなかった逆転劇に会場が沸きあがる。その歓声に応えてフォックスがボロボロの身体を圧して片腕を突き上げる。その後ろでザフィーラとヴィータがゴールしていた。

「それでは順位を発表させていただきます」

 一位、エレナと愉快なナイツ達・フォックス。
 二位、連合ダンディーズ・ザフィーラ。
 三位、ヴォルケンレディース・ヴィータ。
 四位、リリカルヒロインズ・フェイト。

「いやぁ予想外の結果ですね」
「やはりソニックフォームでダメージを受けたのが痛かったですね。立ち直ることが出来ず、後続に抜かれてしまいました」
「それでは見事一位になったフォックス選手へインタビューです。マリー、どうぞ!」

 エイミィに振られてマリーがフォックスに向けてマイクを向ける。

「おめでとうございます!!開始直後の襲撃から見事な逆転劇でした!!」
「おう、ありがとさん」
「それにしてもよくあの状況から起き上がれましたね」
「ま、早いのが売りなんでな。確かに色んな意味で早いぜ俺は」
「それでは何かありましたら、一言どうぞ!」
「んー……。あ、そうだ。誤解の無い様に言っておくが早い早いと言っても夜のほうは」

 しばらくお待ち下さい。







 (CM)

 魔法少女リリカルなのは SS 大型長編予告。

「クロノ、起きなさい。今日はミッドチルダ千年祭よ」
「母さん、クロノ違いです」

 ミッドチルダ千年祭で発動してしまったロストロギア『シルバード』。




「一体ここは………」

 きょろきょろと回りを見ながら歩くクロノ。

「きゃっ!」

 すると、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。

「あっ!すいませ」

 クロノの言葉を止めて、凍りつく。

「いたた………」

 緑色の長い髪。額に付いたよっつの印。自分が知っている顔よりもずっと幼かったが、目の前で尻餅をついて腰をさすっているのは。

(母さん!?)

 間違いなくリンディ・ハラオウンだった。




 『シルバード』の能力は時間を超えた次元移動能力。




「まずいことになった」
「どういうことですか?グレアム提督」
「あの時、本来ならリンディとぶつかるのはクライドの筈だった。だが君が介入したために立つ筈だったフラグが消えた」
「それは、まさか!?」
「そう、このままいけばタイムパラドックスにより、君は世界から消える」




 そのために変わってしまった歴史を正常にするため、時を越えた旅が今始まる。

「誰なのですか?」
「これは………幻の幼リィンT!?」

 古代、無垢なる頃の夜天の書。

「何故、ミッドの魔導師がベルカに加勢する?」
「事情は言えません。ですが、手助けはさせて下さい。烈火の将シグナム」

 ミッドとベルカの大戦時代、有り得ぬはずの共闘。

「父さま」
「この人たち誰?」
「危ない所を助けてくださった恩人だよ。ご挨拶しなさい」
「はい。リーゼアリア五才です!」
「リーゼロッテごさい!!」

 近代、若き魔導師と幼い二匹の使い魔との出会い。

「馬鹿な!?このまま行くと未来はユーノとの『僕達、友達だよね』エンドで世界が滅ぶだと!?せめてザフィーラで!!」

未来、その恐るべき世界の行き先。

「フェイトちゃん、はやてちゃん!」
「うん!」
「いくで、久々!!」
「「「トリプルブレイカー!!!!」」」

 数々の障害を打ち砕く連携技。

「いくぞ、なのは、ユーノ!!アークインパルスだ!!」
「ぶぎゅっ!?」

 猛々しく叫んだクロノがユーノ(フェレット体)を足場に高々と飛び上がる。

「って、元々飛べるんだから僕を踏み台にする必要ないんじゃ!?」

 時を越えてなお深まる仲間達の絆。





 そして物語は全ての始まりの世界へ。

「ここも、改変を受けているのか………?」
「それも破滅に向かってね」
「それを修正できなければ………一体どうなる?」
「今度は君だけじゃない。僕もフェイトもすずかもはやてもエイミィもヴォルケンリッターも………。それだけじゃ留まらない。放送の決まった第三期はおろかアニメの放送自体がなかったことになる。親がいなければ子が生まれないように、原作がなければアニメ版は作られない。そうなったらSCを初め、今あるなのは二次創作も全て消えてしまうんだ」
「………そんな事を引き起こすわけにはいかない!必ずとらハの歴史を元に戻して見せる!!」

 そう言ってクロノは藤見台の外人墓地から『異世界』の海鳴市を睨んだ。



 無責任。
 収拾不可能。
 投げっぱなし。
 ここまで書いておいて執筆予定まるで零の大型長編。

『黒の・トリガー』

 時を越えるフラグを立てよう。





 むしろ誰か書いてください。

 CM終了。

「はい!というわけでフォックス選手のインタビューでした!!なお、フォックス選手は医務室へ行かれました。石田医師宜しくお願いしまーす」
「清く正しい放送を目指しておりますので不適切な発言は控えてくださいね。ところで防御魔法を使えない人間にバリアブレイクって意味があるのでしょうか?」
「それでは次に参りましょう!!次の競技は障害物競走!!この日のために魔窟となったアースラの中を抜け、見事一位を目指してください!!」
「障害をいかに潜り抜けるかが勝負の分かれ目ですね」
「それではこの競技の出場選手の紹介です!!」

 リリカルヒロインズからははやて、ヴォルケンレディースからはシャマル、連合ダンディーズからはユーノ、エレナと愉快なナイツ達からはマキシムの出場である。

「ここは最後の競技のためにどのチームも苦しい配役ですね。この組み合わせでどんな結果が出るかは予測しづらいところです」

 選手が配置に着く。今回のコースは訓練室をスタート、障害を用意した居住区を抜けブリッジがゴールとなっている。

「ここで勝っとかんと後が続かへんから頑張らんと」
「こういうのは苦手なんですけど」
「頑張っていい所見せないと」
「ただ、やるのみ」

 スタートラインに並ぶ三人の前に再びスタート役のロッドが立つ。

「それでは競技開始です。あ、ロッドさん。出力は落としてますよね?普通に撃ったら天井貫通しちゃいますし」
「………」

 問われたロッドは無言でヒドラの弾を入れ替え、無言で調整をし直す。その間、二十秒ほど間を置いてからロッドはエイミィに準備は出来たと頷いた。

「え、えーっと。ツッコミどころがあった気もしますが、競技を始めたいと思います。位置について、よーい……………」

 ドン!!

 この日、二回目の銃声が響き渡った。









「さあ、第一障害は遮る壁。攻略法は単純明快。飛行魔法でも何でもいいので壁を飛び越えてスタート地点である訓練室から出てください」

 これには全選手あっさりと飛行魔法で飛び越えて、次のコースへと向かう。

「ここからが本格的な障害です。第二障害、飛び出る張り手。タイミングよく進まないと張り手を喰らって壁にペッチャンコです」
「そ、それは怖いなぁ………」

 かなりの速度で飛び出る巨大な手の平に選手達がたじろぐ。
 だが、その中で一人、怯む事無く進みでた者がいた。

「先陣を切ったのはエレナと愉快なナイツ達のマキシム選手!!張り手を気にする事も無く果敢に進みます!!しかし、これは無謀すぎないか!!あーっと!!そう言っているうちに張り手がマキシム選手を捉えます!!これは直撃コースだー!!」

 誰しもがぺったんこになるマキシムを想像する。だがそれはその通りにはならなかった。
 マキシムを襲った張り手は逆に弾かれるように引っ込んでしまった。速度を落とす事無く突き進むマキシム。

「こ、これは驚いた!!マキシム選手、自慢の防御魔法で障害を逆に押し退けた!!これじゃ障害物競走にならないぞー!!」
「もし、それを計算済みでの采配だとしたらずばり的中ですね」

 その転がる岩のような勢いに見る見る内に差を付けられる三選手。

「まずい、このままじゃ………!!」
「こうなったら………!」

 もう次のコースまで目前、止まる理由などなかった筈のマキシムが突如足を止めた。

「おや、一体どうしたのでしょう?マキシム選手が立ち止まってしまったぞ?」
「いえ!よく見てください!!」
「……………?あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 絶叫するエイミィ。その視線はマキシムの胸に、否マキシムの胸から伸びた手に注がれていた。

「が、がはっ!!」

 その胸から伸びた手が引っ込むとマキシムは呻き声を上げて倒れ伏した。

「た、旅の扉だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!シャマル選手、後方から隙を突いてリンカーコアを抉り取ったぞぉぉぉぉぉぉぉっ!!これはひどい!!正しく古傷を抉る行為!!こんな腹黒くていいんでしょうかリンディ提督!?」
「ま、お祭りですし笑って済ませましょう」
「正直笑えません!!ですが競技は続きます!!マキシム選手リタイアです!!」

 その後、三選手はなんとか張り手ゾーンを抜けて次のコースへと向かった。

「次の障害はトラップ&ダーク!!バインド地雷、隠し段差、空気砲と一直線ながら様々なトラップが用意され、さらには照明の点灯と消灯が繰り返されるコース!!うっかり進むと痛い目を見るぞ!!」
「かと言って慎重になりすぎると時間を食いますので、判断が難しいところです」

 コースに入った途端、シャマルはユーノに向かって旅の扉を向ける。辛くもユーノは横に飛び退ってそれをかわす。

「ちょ!?シャマルさん!?なにを!?」
「はやてちゃん!!先に行ってください!!」
「シャ、シャマル?」
「もう、あんな腹黒い事した後じゃ、主を立てるくらいしか私の良心は示せないんです!!だから、行って下さい!!」
「こ、これは意外な展開だ!!シャマル選手、敵チームであるはやて選手を先に行かせようとしているぞ!?」
「どうやら、先ほどの行為でひどく良心を痛めたみたいです。元々悪人じゃありませんし、半ば乱心状態になってしまったのでしょう」
「そ、その皺寄せが何故僕に!?」

 ユーノの言葉は誰にも聞き届けられない。その間にもはやては先に進んでしまっているが、シャマルに狙われたユーノは己の身を優先するほか無かった。

「うふふ、逃がしませんよ〜」
「これは怖い!!シャマル選手、虚ろな顔で旅の扉を連発だ!!暗くなる通路といい、突如伸びる手といい下手なホラーよりずっと怖い!!」

 逃げ続けるユーノだが次第に壁際に追いやられていく。その時、自分の隣に開閉のスイッチがある事に気付く。ロックはかかっていないようだ。

「………」

 このままではやられる。そう思ったユーノは一縷の望みを託してそのスイッチを押した。僅かに遅れて扉が開く音。すかさずユーノは開いた扉に飛び込みすぐさまロックをかけて扉を閉めた。

「ここが何の部屋かわからないけど、何か状況を打破できそうなものは!?」

 首を左右に振り、部屋を見渡すユーノ。だがその部屋には簡素なベッドと私物らしいものがいくつかあるだけでユーノが望むようなものは何も無かった。

「そういや、このコースって居住区だったね………」

 失望のため息をつくユーノ。そうして諦めきれない様子で部屋を見ると、ある物が目に止まった。

「あ、あれって!?」

 一見何の変哲もないカード。だがそのカードはとあるデバイスの待機状態によく似ていた。

「S2U!?これなら武器になりそうだ!」

 その時、背後で扉が開く音がした。どうやら旅の扉でロックを解除したようだ。ユーノは振り向き様に腕を突き出してデバイスをシャマルに差し向ける。シャマルのユーノの手にあるものがなんなのかを理解すると、顔に緊張を走らせた。

「デバイス、起動!!」

 気合と共にデバイスに魔力を通す。

『ん、あー、ゴホン。お、おはようフェイト。朝だぞ』

 それとともに聞き覚えのある執務官の声が響いた。

「……………」
「……………」
「あっ!映像繋がりました!ユーノ選手が逃げ込んだのはどうやらフェイトちゃんの部屋のようです!!ところであのデバイスはなんでしょう?」
「M2Uね。この間の契約記念日にクロノがフェイトにあげたの。録音機能とか録画機能とかがたくさん付いた高性能記憶媒体です。うっかり部屋に忘れたみたいね。」

 その解説を受けて。

「フェ、フェイトちゃん!あのデバイスはええとして、なんやあの録音ボイスは!?明らかにクロノ君やったやん!!」
「え、えっと。タ、タイマーセットも出来て、その目覚ましの代わりにもなるから。ク、クロノだけじゃないよ!?母さんやアルフのバージョンもちゃんとあるから!!ちゃんと日によって変えてるよ!?」

とリリカルヒロインズが騒ぎ立てたがそれは余談である。あと今はやてはホッピングジャンプに嵌って先に進めていなかったりする。

「…………」
「…………」

 一方、ユーノとシャマルはしばし、見つめあい。

「…………えいっ♪」

 とりあえず抉っとく事で決着をつけていた。









「えー………、色々ありましたが障害物競走は一位リリカルヒロインズはやて選手、二位ヴォルケンレディースシャマル選手、連合ダンディーズユーノ選手リタイア、エレナと愉快なナイツ達マキシム選手リアイアという波乱の結果に終わりました」
「予測しずらいとは思いましたが、この結果は本当に予想外です」
「そしてとうとう最終競技ですが、ここまでのポイントを見るとどのチームも優勝の可能性が残されています。勝利の女神は一体どのチームに微笑むのか!?最終競技、勝ち抜き格闘戦です!!」
「最後の競技にして最大の華。熱血行進曲の楽しさの半分以上が詰まっているといっても過言ではないかもしれません」
「さりげなく元ネタをバラしていますが、特にツッコミません!!それでは選手の紹介です!!」

 歓声と共にモニターが切り替わり、これから紹介する出場選手を会場に大きく映し出した。

「リリカルヒロインズからは高町なのは選手!!」
「がんばろうね、レイジングハート」
『all right』

 なのはが手にした相棒に声をかける。

「ヴォルケンレディースからはシグナム選手!!」
「集団戦だろうと、ベルカの騎士に敗北は無い」

 シグナムが抜き放ったレヴァンティンを一閃させる。

「連合ダンディーズからはクロノ選手!!」
「さて、どう戦うかな」

 クロノが腕を組んで戦いの始まりを待つ。

「エレナと愉快なナイツ達からはエレナ選手!!」
「優勝は頂くぞ」

 エレナが手にしたデバイス『プレッジ』と『プラミス』を回転させながら戦いに備える。

「以上!!四選手です!!!」

 その四選手を競技を終えたチームメイト達が見守る。

「さー、勝ち抜き格闘戦の会場は決戦ならこの場所。海鳴臨海公園に面する海上です。この決戦を制し、優勝を手にするのは一体どのチームか!?それでは最終競技、勝ち抜き格闘戦、開始です!!」

 カーン!!とゴングの音が海上に響き渡った。






 開始と同時に動いたのはシグナムとエレナだ。その両者が向かうのは様子を窺おうとしていたなのはの方だった。

「え、えーっ!?」
「シグナム選手とエレナ選手!両者が揃ってなのは選手に向かっていく!これは共闘ということでしょうか!?」
「いえ、両選手とも近接戦が得意な選手です。なのは選手とは距離を置くと不利なので先に潰しておこうという狙いが重なったのでしょう」

 なのはがどこに逃げるべきかを考える間に、シグナムとエレナはもうその間合いまで距離を詰めてしまった。迂闊にも逃げる機会を逸したなのははラウンドシールドを展開する。
 だが、それも賢い選択ではない。何故なら両者の一撃は堅牢なラウンドシールドをも粉砕しうる威力を持っているからだ。それが同時に襲い掛かってくるのだ。最早逃れる術は無かった。
 迫るシグナムとエレナ。なのはは足掻くようにカートリッジをロードして待ち構える。二人がデバイスを振り被り、一閃させるのが見えた。僅かに遅れて甲高い音が響いた。

「あれ………?」

 襲ってくると思った衝撃はやってこなかった。呆気に取られたなのはが目の前の光景をなんとか理解しようとする。
 そこには鍔迫り合うシグナムとエレナの姿があった。

「おーっと!?シグナム選手とエレナ選手がなのは選手を目の前にして標的を変えたぞ!?これはどういうことでしょうか!?」
「おそらく、両選手とも、なのは選手を狙うのは相手に任せて自分はその隙を狙おうとしたのでしょう。その殺気を感じ取って標的を変えたようです」

 デバイスを挟んで睨みあう二人。どちらも引く気配は無い。それをシグナムが問いただす。

「ベルカの騎士に近接戦を挑むつもりか?」
「あいにく、近接戦が一番得意なのでな。これで勝てなければ勝ちは無い」

 エレナの最も得意とするのは近接戦。射撃魔法も砲撃魔法もそのほとんどが近接戦闘に持ち込むための手段でしかない。故に例え近接戦が相手の土俵であろうとも引く事は出来なかった。
 不適に笑いあう両者。

「ならば見せてもらおうか。得意の近接戦とやらを!」
「近接戦がベルカのものだけと思うな!!」

 互いにデバイスを弾いて向き直る。先手を打ったのはエレナだった。
 両手に持ったプレッジとプロミスを横から叩きつける。一撃ではない。まるで回転をしているかのような連打をシグナムに見舞う。それをシグナムは一本の剣で全て捌く。構わずエレナは怒涛の連打を繰り出すがいずれもシグナムの防御を切り崩せない。シグナムは冷静に攻守の入れ替えの機を狙う。
 だが、二十二合目。シグナムが右からの一撃を受け止めると、エレナはプレッジをレヴァンティンから逸らすように滑らしシグナムに背を向けた。
 警戒したと同時に腹に叩き込まれる衝撃。プレッジを振るった勢いを利用したエレナの後ろ蹴りがシグナムの腹部にめり込んだ。
 すかさずエレナがさらに身体を半回転させ、追撃をいれようとプレッジを振り被る。

「っ!」

 息が詰まる最中、シグナムは肩から体当たりをしてそれを防ぐ。今度はエレナが虚を突かれる。まともに吹き飛ばされ追う様に放たれた横薙ぎを受け止め、大きく弾き飛ばされながらもなんとか防ぐことに成功する。そこでようやく両者は息をついた。
 シグナムはまだ鈍痛が残る腹部を押さえながら感心する。左右からの連打も速かったが、そこから突如攻撃の軌道を変化させた蹴りに対応できなかった。連打も徐々に蹴りを放つ距離を取るための布石。その練りこまれた戦術は見事なものだった。

(近接戦の技術だけならテスタロッサより上か………!)

 一方のエレナも内心で感嘆していた。押し込むつもりで叩き込んだ連打は全て見切られていた。蹴りこそ入れられはしたものの、そこから一瞬で切り返されるとは思わなかった。その判断力は、長い戦歴を持つ者しかないもの。脅威としか言いようが無かった。

(これがベルカの騎士………!)

 互いの想いを感じ取ったように両者がまた不適に笑いあう。そして申し合わせたように距離を詰めた。

「凄い凄い!!ここまでの空気を吹き飛ばすかのような高度な近接戦の応酬!!素人には目で追うことすら困難な闘いだ!!それに引きずられるように観客のボルテージもここに最高潮を迎えているうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 エイミィの言葉を示すかのように会場から湧き上がるシグナムコールとエレナコール。一進一退の攻防に観客の歓声は止むことは無い。

「おっと、ここで両者一旦距離を取った!エレナ選手が両デバイスを突き出した構えを取る!!ミドルレンジでの得意技の一つ、パイルバンカー・ウェイブシフトだ!!それもダブル!!」
「コマンドはターボボタン+両手武器攻撃ですね」
「微妙なネタを挟みつつ、対するシグナム選手は攻防一体の陣風で叩き落とす!!その余波が消えぬ内に両者再び接近戦!!なんと目まぐるしい攻防だぁぁぁぁぁぁっ!!」

 加熱し続けるエイミィの実況。両者から離れ、その様子を見ていたクロノも温度の差はあれ、感嘆するという点では同じ心境だった。

「あの子ったらあんな所で見物しちゃって………。今、迂闊に手を出せば両方から標的にされるのは目に見えてるけど、もっと盛り上げるのに一役買って欲しいわね………」
「初っ端から漁夫の利狙いですか。賢しいですねー、クロノ選手」

 解説と実況から苦言をかけられながらもクロノは冷静に戦況を見守る。どうやら、両者ともケリをつける気のようだ。
 睨みあう両者。一見、攻め手を探るような距離は両者にとって既に近接戦の間合い。もし、射撃魔法でも放とうとすれば即座に相手を叩き伏せる事が出来る距離だ。

「どちらの技術が上か、はっきりさせたい所だが後も詰まっている。これで終わりにするとしよう」

 シグナムはこれが競技中だと言う事を忘れてはいない。あとに控える相手のためにも消耗戦をさけるつもりだ。

「私はどちらでもかまわんがな。そちらの要望に答えよう」

 対するエレナはシグナムの考えを理解しているわけではない。技術の競い合いにしろ一撃で決するにしろ、面白い事には変わらないからシグナムの誘いに乗っただけだ。
 その答えにシグナムは微笑を浮かべてから吼えた。

「行くぞ!!」
「来い!!」

 シグナムはカートリッジをロードさせるとレヴァンティンを大上段に構える。対するエレナも二つのデバイスを手の中で回転させてから構え直す。
 高まりあう魔力。その波動にそれまで歓声を上げていた観客全員が思わず息を呑む。エイミィもリンディも黙って二人の動きを見守った。
 何の合図も無い。両者にしかわからぬ呼吸で二人は同時に相手に向かって肉迫した。

「紫電一閃!!」
「パイル、バンカアァァァァァッ!!」

 激突する両者。誰しもがその結末を焼き付けようとした時。

「「は?」」

 桃色の閃光が二人を飲み込んだ。直後、大爆発。シグナムとエレナは仲良くピューと落下してドボーンと海に落ちた。

「…………」

 いきなりの事に唖然とする会場。

「やったぁ!」

 そんな中一人喜ぶなのはさん。

「…………………な」

 誰もが凍りつく中、いち早く立ち直ったのはエイミィだった。

「なんという事でしょおぉぉぉぉぉぉぉっ!?なのは選手の砲撃が真剣勝負をしていたシグナム選手とエレナ選手を吹っ飛ばしてしまったぁっ!!漁夫の利なんてものじゃない!!正に悪魔!管理局の白い悪魔の名に相応しい悪魔の所業です!!」
「な、なんか凄い言われ方!?」

 悪魔の所業に会場は今だ凍りついたまま。
 だが、一人。凍てつくことのなかった人物は行動を開始していた。

『Ice Partisan』
「!?」

 突如、鳴り響く電子音声。なのはがそれに反応するよりも早くレイジングハートが自動防御を展開する。
 その直後、叩き込まれる氷結の一閃。辛くも障壁がそれを遮り、その余波で銀の粒が輝くように舞った。
 驚くなのはの目の前にはデュランダルを手にしたクロノの姿があった。

「おおっとぉっ!?先ほどまで戦況を静観していたクロノ選手が斬り込んできた!引こうとするなのは選手に追いすがり続ける!!」
「あの光景を見て、距離を置くことに恐怖を覚えたようです。強引過ぎるほど距離を詰めて戦おうとしていますね」

 リンディの言葉は多少過剰ではあったが事実であった。あれだけの大出力の砲撃を放ったなのはに改めて脅威を覚えつつ、それを放たせないよう肉迫し続ける。
 対するなのははクロノの近接攻撃を防御魔法で捌きつつ、隙を見て誘導操作弾を放ち、クロノから距離を取ろうとする。
 先のシグナムとエレナとは打って変わって、中近距離で互いの魔力が乱舞しあう魔力戦だ。その飛び交う魔力の量に観客はようやく、熱を取り戻してきた。
 その戦況を解説するエイミィがふと思い出したようにリンディに尋ねた。

「ところでリンディ提督。この大会って優勝したら何か賞品ってあるんですか?」
「ありますよ。二泊三日の慰安旅行」
「………なんか、規模の割にはこじんまりとした賞品ですね」
「うーん、ならおまけをつけようかしら」

 そう言ってリンディはマイクを握って立ち上がる。会場ではなく競技中のクロノ達に音声が届くように調整してから、大きく息を吸って大声で言った。

「なのはさーん!!優勝したらクロノの事、好きにしていいからー!!」

 もちろんフェイトとはやてさんもよー、と付け加えるのも忘れない。

「何言ってんだ、あんたはぁぁぁぁぁぁっ!?」

一方、急遽賞品にされた少年は試合中である事も忘れて大声で叫んだ。

「というかですね!!まさか、ここまで膨れ上がった話をそんな安直なオチで済ませようなんて」

 クロノが言葉を途切れさせる。悪魔の舌舐めづりにも似た、撃発音が響いたからだ。
 ぎぎぎ、と油の切れた機械のような動作で首を回すクロノ。

「────────」

 そこには桃色の翼を広げた槍を持つ悪魔が一人。

「クロノ君」
「………なんだ、なのは」
「優しくしてね(はぁと)?」
「何がだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」








 その後、奇跡的に勝利を収めたクロノだったが、賞品である慰安旅行には当然のように皆ついてきたので全く慰安にならなかった事を記しておく。
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