リリカルなのは SS

                    NG to you forever

 1 振り向けば

「クロノ君」

 その声が、下がろうとしていた顔を引きとめた。

「ごめんね。待たせちゃって」

 近づいてくる足音と声。それとともに大きく感じる存在。

「待ったぞ、なのは」

 顔を上げて振り向くクロノ。

「………」

 なのははなだらかな斜面をゆっくりと降りてくる。つまり、自分より高い位置にいるわけで、なおかつ丘から流れてくる風でスカートがいい感じにはためいている。

(もうちょっと、もうちょっとで………!)

 自然と身体を傾けるクロノ。

「………」

 そんなクロノになのはは笑顔でつま先を鼻先に叩き込んでやった。





 2 憧れの職業

「ん?」

 顔を下げると、そこには3〜4歳の布を頭に巻いた少年がいた。どこかで転んだのか、顔を土で汚したその少年はキラキラとした瞳でクロノを見ていた。

「どうした?」
「お兄ちゃん、管理局の人?」

 頷いてみせると瞳の輝きが大きくなったように少年の顔がさらにと明るくなった。興奮した面持ちで両手を振って勢い込む。

「あのねあのね!お父さんが言ってたけど管理局の人って凄いんだって!!」

 少年の飾りのない賞賛にクロノは照れたように苦笑した。その様子に気付いた様子もなく少年は興奮して言葉を重ねる。

「お父さんが言ってたんだ!管理局に入れば色んな世界の女の子とフラグが立てられるって!!年下年上貧乳巨乳、ツンデレ病弱獣耳なんでもござれって!!だから僕も大きくなったら、管理局に入りたいんだ!!」
「そうか。……………君、名前は?」
「ラーク!!」
「ならラーク。それはとても困難な道だ。僕の知り合いにも発掘家の一族の者がいるがあいつは変身魔法を利用して安易に女湯に入ったから淫獣呼ばわりだ。それはそれで羨ましいが、そんな事をしているとそうなれないから気をつけるように」
「うん!!」

 ラークは元気よく答えるとその場から駆けて行った。

「クロノ君って、フラグ好き?」
「大好きだ」
「─────でも、この話は個別ルートなの」
「ってあれ!?いつの間にバインドがっ!?更にはなのはがスターライトブレイカー撃とうとしてるというかこれは第一期必殺コンボでは!?」
「個別ルートで浮気は許さないの」

 クロノ、危うし。







3 こっちの方がイメージが普通

 ──────『リヴァイアサン』召還。





 その時だ。大気が振動を始めたのは。

「なん…………だ?」
「え………?」

 地響きが聞こえる。大地が揺れる。
 それだけならまだいい。だが、ここは内陸部なのに辺り一帯が海になっているのはどういうことだ?

「………」

 恐る恐る、地上に目を向ける。眼下には大きな渦巻き。
 そこから大きな蛇が姿を現した。

「リヴァイアサンだー!!」

 どうやら有名な海の化け物のようで、誰かがその名を恐怖と共に叫んだ。いや、そういうことじゃなくて、と頭の中で訴えたが余りの事態に唖然として何も言えない。

「きゃああああああっ!」
「って、なのはーーーーーー!?」

 気がつけばどういう経緯か知らないが空を飛んでいた筈のなのはが海に落ちて渦巻きに巻き込まれてしまっていた。助けようにも気がつけばクロノ自身も海に身を投げ出しており、どこぞへと流されていく最中だった。










 次回予告!!

 海に投げ出されたクロノ。流れ着いた先は、かつて自分が攻め入った魔導師達の村だった。
 そこで彼は双子の猫使い魔に出会い、パラディンとなるため試練の山に向かう!果たして彼は黒から白になる事が出来るのだろうか!?
 一方、大渦に飲み込まれたなのはは目を覚ますとそこで幻獣王と対面する!!え、それって大きくなって帰ってくるということ!?

 次回、リリカルファンタジーW。こうご期待!!

 ────────あれ、そんな話だったっけ?







 4 怒りの訳

「いきなり、何をする」
「君こそ、何をしてるんだよ」

 クロノの視線に怯む事無く、ユーノはクロノの胸倉を掴む。

「なんで、個別に入ってるんだよ」
「………………」
「このままフラグを立て続けて、でも誰ともくっつかなくて。そのまま第三期に突入して新キャラも攻略してハーレムを作って僕におこぼれをくれるって話はどうなったんだよ!!」
「そんな話はしてねえぇぇぇぇっ!!」

 思いっきり、ユーノを殴りつける。マウントを取ってこれ以上ないくらい殴りつける。
それでも、ユーノが屈する事は決してなかったと言う。






 5 メモリーズ

「────────…………」

 だけれども。
 そんな苦しみの中でさえ。

『私は、クロノ君やフェイトちゃんやユーノ君。他の皆と同じ場所にいるよ』

 夜空の下。
 繋いだ手がとても柔らかくてドキドキした事。

『にゃ、にゃあああっ!?』

 思い出に似た草原。
 無防備に眠っているという好機を逃した事。

『食べさせてあげよっか?』

 入院した病院。
 どうせなら、メイド衣装を強要してご奉仕させるべきだった事。

『おおおおおおおおかーさん!?』

 休日の喫茶店。
 あそこで『娘さんを僕に下さい』と言っていれば今日の苦労はなかった事。

『─────────────』

 初めて入った彼女の部屋。
 正直、押し倒そうかと思った事。

『…………うんっ!』

 雨の降る町。
 ずぶ濡れになって服が透けて見えた彼女に欲情した事。

『…………』

 休日の約束。
 初めてが外なのはどうなのかなー、と思って踏み止まり、後でそれもありだったと激しく後悔した事。

『クロノ君』

 桜を待つ草原。
 あともう少しでスカートの中が見えそうだった事。

 そんな他愛のない一つ一つが。
 どうしようもないほど、心ときめかせた。

「なんだ、意外といい人生送ってるな僕」

 クロノ、立ち直る。




 6 舞台的には艦隊戦、でもどっちかっていうと荒野乱戦

「次っ!」

 クロノは次の目標を定める。正面からやってくる敵に自分から接近、近接距離に入った瞬間、瞬間的に加速して敵の懐に飛び込みデュランダルを一閃。傀儡兵が怯んだ所を狙って斬撃を重ね、三撃目で傀儡兵を下に叩きつけて撃墜した。

『傀儡兵、撃破』
「懐に飛び込めばこっちのものだ!」

 デュランダルの言葉に応じながらも、クロノは止まらない。今度は傀儡兵が密集している所に飛び込んで、そのうちの一体を掴み取りその自由を奪うとそのまま周囲を巻き込んで高速回転した。一体がその竜巻にも似た回転に巻き込まれ、一体がそれに構わず飛び込んで逆に粉砕された。その光景を目の当たりにして傀儡兵がクロノから離れようとする。そこを狙い済ましてクロノは掴んだ傀儡兵を砲弾のように逃げようとした傀儡兵に投げつける。凄まじい速度で放り出された傀儡兵が逃れようとした傀儡兵に激突し、一瞬遅れて爆発を起こして撃墜された。

『傀儡兵、撃破』
「傀儡兵で止められると思ったか!!」

 言いながら、さらに突撃を敢行するクロノ。心なしかとっても楽しそうだった。

「っていうか、あれクロノだよね?」

 そのなんだか別人にも見える戦い方にユーノが疑問の声を上げ、同意を求めてなのはに振り返る。

『敵機接近。ホーミングミサイルの使用を推奨します』
「わかったの。切り替えを頼むなの」
「ってあれ!?なのは!?」
「ほら、ユーノ君。ぼさっとしてないであっちのやられそうな武装局員にゲイザーをかけてくるなの」
「ちょ、僕サブウェポン扱い!?」

 まぁ、よく使われるだけましというものである。






7 疾風ザンバー刀

 そのトライデントは紫電を発して、今まさにその牙を剥こうとしているところだった。

「フェイトちゃん、今が駆け抜ける時や!」
「うん!!」

 フェイトとはやてが飛び上がる。はやてはスレイプニールを発動させ、自分の上から降って来るフェイトを受け止めるように肩車する。

「「刃馬!一体!!」」

 夕日をバックにバルデッシュをザンバーフォームへと変形させる。そうして、リヴァイアサンへと突撃する。

「切り裂いてバルデッシュ!!戦斧のごとく!!」
「駆けろ私!!その名のごとく!!」

 凄まじい速度でトライデントに肉薄する二人。どういうわけか、空中を飛んでいるにも関わらず、蹄の音が聞こえてくる始末だ。

「「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 振るわれる一閃。その一撃は文字通り、牙を一刀両断した。その余りある威力の後を追うように二人の背後で大爆発が起こる。

「私達に」
「断てぬものなし!」

 その光景を振り返るまでもなく、二人は背に受けるのであった。

「ところでこれ、私がフェイトちゃん肩車する必要あるの?」
「……ないよね」






 8 突貫

 その通信になのはは顔を上げた。

「なのはっ!?」

 なのははカートリッジをロードさせ、レイジングハートをエクレリオンモードへと変形させる。先端が開き、ストライクフレームが形成。左右からは魔力の翼が広がった。
その矛先を、なのはは氷漬けのリヴァイアサンに向けた。

「──────────わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 絶叫とともに、リヴァイアサンに突貫する。

「なのはーーーーーーっ!?」

 驚きにその名を呼ぶユーノは、眼下でリヴァイアサンを覆う氷の一角が粉砕されるのを見た。

「…………」

 追うべきか、それとも救援を呼ぶべきか。ユーノがどう動くべきか考えるのに数秒の時間を要する。

「…………って、あれ?」

 眼下のリヴァイアサンの各所から爆発が噴出すように発生する。リヴァイアサンの巨体を侵食するように爆発は規模と範囲を広げていき、やがて蛇が獲物を飲み込むようにリヴァイアサンを消滅させた。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 やがて、爆発が晴れるとその中央には一人の少女の姿。

「やりすぎちゃったかな?」
『いいんじゃないでしょうか』

 って、いうかクロノは?






9 集合理由

 そうして皆がなのはを守るように円陣を敷いて、並び立った。

「皆、どうして………」
「ここで、個別に入られたら14歳シリーズでの私の立場がない!!」
「そんなら二回も中篇やった私の立場は!!」
「私の胸で悩殺する前にクロノ執務官はでいなくなられたら困る」
「か、勘違いするなよ!!あ、あいつがいなくなったら、はやてが泣くから!そ、それだけだかんな!ほ、ほんとだぞ!!」
「クロノさんは私色に染めるんです!!」
「ハラオウンの貞操は俺が守護する!!」
「あいつの事は、一度『ご主人様』って呼びたかったんだ!!」

 皆の言葉がなのはの胸に染み渡る。皆が同じ想いを抱いていた。

「でも、クロノ君は私のものなの」

 ジャキンとレイジングハートを皆に差し向ける。手を出したらコロスぞと赤く光る宝石がそう言っていた。

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 傀儡兵そっちのけで巻き起こる大乱闘。というか、修復機能が追いつかなくなるくらい内部で暴れられてリヴァイアサンも大混乱だ。

「って、僕関係ないんだけど!?」

 ユーノ、巻き込まれ。







 10 まだまだです

「クロノくーーーーーーーーーーんっ!!!!!」





 とても聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
 何も考えられないまま、導かれるように顔を上げる。

 メゴッ

 なのはの膝がいい感じにクロノの顔面にめり込む。落下の加速も合わさったニーキックがクロノの頭を床とサンドイッチにさせた。

「あ、勢い余っちゃった」

 高町なのは、機動はまだまだ苦手。






 11 ライダーネタは義務

 どうしたものかと、思案するクロノ。そのクロノになのはは思い出したように告げる。

「クロノ君」
「ん?」
「脱出する方法ならあるよ」

 そう言ってなのはは一枚のカードをクロノに手渡す。それを受け取ってクロノは目を丸くする。

「………ライダーパス?」

 そう言った瞬間、どこからともなくレールが現われ、その上をデ〇ライナーが走ってくる。先頭車両がクロノを横切った辺りで次第に速度が落ちて行き、ぴったり乗車口が目の前にやってくる。地味ながらに職人技である。

「これに乗れば助かるの」
「そりゃぁ、未来か過去に逃げればどうとでもなるよなぁ……」

 そうぼやきつつ、クロノはなのはに手を引かれてデンライナーに乗り込んだ。

 それが新たなる物語の幕開けになることを彼はまだ知らない。







 いつも大変な目にあってばかりのクロノ。
 その彼にデバイス達が取り憑いた!

『てんめ、この戦闘にしか脳がねぇ最新型は引っ込んでろ!』
『そんな事いってるから、第二期で出番がなくなるんですよ先輩』
『原作での俺の活躍を知らない坊主がぁ!!』
『やる気ですか?』
『まぁまぁ。二人とも落ち着いて』
『『非公式は黙ってろ!!』』
『………言ってはならない事を言ったなぁ!!』

 ズギューン!!ズギューン!!ズギューン!!

「喧嘩は駄目なの!!」
『『『………はい』』』

 エスタロス、デュラタロス、エルタロス。取り憑いたデバイスによって三種類のフォームに変身!!一つ足りないけど気にするな!!
 その力を手に、いまクロノの戦いが始まる!

 仮面ライダー黒王、始まります。


 ────だから、そんな話(以下略)。







 12 悪魔の脅威

 空間が振動し、光の柱が立ち昇った。
 白い閃光が辺りを染める。一瞬だけその光がなにもかもを埋め尽くした。
衝撃は無い。時間すら光に染められてしまったかのようだった。
やがて、光が収まり現実が色を取り戻し始めた頃、目を覚ましたようにアースラは状況を確認した。

「──────────リヴァイアサンの反応無し。完全に消滅しました。それ以外の反応は…………っ!?」

 アレックスが驚愕の表情を浮かべる。その信じがたい事実を確かめるために、スクリーンに映像を映し出す。

「一体、どうし………っ!?」

 映し出されたのはリヴァイアサンの爆発で立ち込めた辺りを覆いつくすほどの煙。その中にうっすらと見える人影があった。
 その煙が晴れ、その影の主はぽつりと呟いた。

「ふう、びびらせやがってなの」
『ナ〇パ!?』

 ところでクロノ何処行った?






 13 Forever

 そうして、桜が舞う春の草原で。

 二人は約束を結ぶように互いの身体を抱きしめあった。

 ミシッ………。

「って、あの、なのは?」
「ふふふ、もう離さないの」
「ちょ、なのは。苦しい、苦しいんだけど!?」

 ミシミシベキボキバキブチッ!!









「っは!?」

 脂汗を流しながら、跳ね起きる。内容は覚えてないが酷い悪夢を見ていた気がする。

「一体なんだったんだ………」

 さて、状況を確認しよう。ここは海鳴市の桜台の裏にある草原で僕は今なのはと待ち合わせの最中だ。以上、状況確認終わり。

「………」

 はて、状況確認をしなければいけない状況だったのだろうか、とクロノが首を傾げている時だった。

「クロノ君」

 その声が、下がろうとしていた顔を引きとめた。

「ごめんね。待たせちゃって」

 近づいてくる足音と声。それとともに大きく感じる存在。

「待ったぞ、なのは」

 顔を上げて振り向くクロノ。

「………」

 なのははなだらかな斜面をゆっくりと降りてくる。つまり、自分より高い位置にいるわけで。なおかつ丘から流れてくる風でスカートがいい感じにはためいている。

(もうちょっと、もうちょっとで………!)

 自然と身体を傾けるクロノ。

「………」

 そんなクロノになのはは笑顔でつま先を鼻先に叩き込んでやった。

 以下、ふぉーえばー



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