リリカルなのは SS
Song to you foever After
二人の関係



『一緒にいよう』

 草原でかわされた二人の約束。
 想いを通じ合わせて結んだとても大切な約束。

 それから、二人は──────────────────────。










『クロノ君へ
今度の日曜日、お休みだったよね?私もお休みだから一緒に出かけませんか?』

 昼休み。アースラの食堂でそのメールを確認したクロノは頭の中でスケジュールを確認して、すぐさま返事を返す。別段予定はない。なら、休日を彼女と過ごすことに何の異論を挟む余地があろうか。メールが送信されるのを確認すると携帯をポケットにねじ込み、既に確保してあった昼食を取ろうとした。

「ま〜た、なのはちゃんからのメール〜?」

 と、それをめざとく見つけた部下がやってきて、クロノの前の席に陣取った。その顔には含みのあるニヤニヤとした笑いが浮かんでいる。それを訝しく思って、クロノはその人物、エイミィに尋ねた。

「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「べっつにぃ〜?」

 先の事件で入院したクロノが、退院して仕事に復帰してから休憩時間にメールを確認している姿はスタッフの間で周知となっていた。無自覚でそうしているクロノはその事を知らない。

「何か言いたそうだな……」
「ん〜?そうだねぇ〜。クロノ君にもとうとう春が来たんだなぁ〜ってねぇ〜」

 春が来た?確かにもう季節は春だが、僕に来たとはどういう意味だろうか?

「何のことだ?」
「またまたぁ〜。とぼけちゃって〜」

 あのクロノの相手が誰なのかは誰なのかは皆が気にするところ。エイミィも例外ではなく、皆の期待を背負って調べるとあっさり答えが出た。そもそも、クロノとその相手はそれを隠そうとしている様子もない。知られても構わないという事なら、こちらはそれを全力で冷やかすだけだ。

「話が見えないのだが……何を言っているんだ」
「付き合い始めたんでしょ?なのはちゃんと」
「─────────────────────────────────な」
「お〜っと!とぼけようとしても無駄だかんね!その携帯のメールの相手がなのはちゃんしかいないってことは調べてあるんだから。着信履歴も九割がなのはちゃん!何それ、それもうなのはちゃん専用機?」
「ちょ、ちょっと待て!いつの間にそんなことを!」
「クロノ君。告白はどっちから?なんて言ったの言われたの?これでデートは何回目?やっぱりあれ?付き合い始めのカップルとなると、デートの度に気持ちを確かめ合っちゃったりするわけ?『なのは、愛してる』『クロノ君、わたしもっ』みたいに?どうなの?そのへんどうなの?エイミィお姉さんはぜひとも知りたいなぁ〜。このこの幸せ者〜っ」

 矢継ぎ早に言葉を叩きつけて、バンバンと肩を叩く。さて、この純朴少年はどんな風に慌てふためいてくれるのか、期待に瞳を輝かせる。

「──────────────────────エイミィ」

 が、予想に反してクロノは重い声を発する。その重さにエイミィはドキリとして調子に乗りすぎたかと内心で冷や汗を掻き出した。

「その、だ。やはり、互いの気持ちを確認するのは大切なことなのだろうか」

 そうして、クロノは何かとんでもないものを見てしまったような深刻な顔で問いかけてきた。真顔でそんなことを聞かれて、エイミィはしどろもどろになって答えた。

「え?え?そ、そうだね。やっぱりあれなんじゃない?そういうのは大切なことなんじゃないかなと思うけど」

 これはなんだ。新手の切り替えしか。所詮、一人身の僻みは幸せカップルには敵わないのか。

「そう、か。そうだな。うん…………」

 しかし、クロノは追撃をかけるでもなく深く思案するように口元に手を当てる。口こそ開かなかったが、口の中でぶつぶつと呟いて考え込む。

「ちょ、ちょっとどうしたの、クロノ君?」

 そのただならぬ様子にエイミィが尋ねる。一体どうしたと言うのだろうか?

「いや、人に尋ねるようなことじゃないのだが……」
「なになに?なんなのよ?いいから言ってみてよ?そんな風に言われると余計に気になるじゃない」
「そう、か。なら聞くが───────────」

 そうして、クロノは口を開き、ソレを尋ねた。














 クロノがエイミィに問い質されていたのと同時刻。

『わかった。予定は空けておくから、いつもの時間に』

 返ってきたメールを確認すると、なのはは嬉しそうに笑って携帯を閉じて、ポケットに仕舞うと広げたお弁当を手に取った。

「なのは〜。誰からのメール〜?」

 それを目ざとくアリサが見つけてニヤニヤと尋ねる。最も、最近ではよく見かける光景だし、目の前で見せられて気がつかないわけがない。

「クロノ君からだけど、どうかした?」
「隠そうともしないし、この子は……」

 多少顔を引きつらせながら、やれやれといった様子のアリサ。その様子になのはは首を傾げる。それに気づいた様子もなく、アリサは感慨深そうに言った。

「いやぁ〜、それにしてもなのはに先を越されるなんて、人生ってわからないものね〜」

 先を越す?勉強でも運動でもアリサの上を行った覚えはないのだが、一体何の話だろうか。

「アリサちゃん、何のこと?」
「決まってるでしょ?フェイトのお兄様とのことよ」
「クロノ君のこと?」
「付き合いだしたんでしょ?」
「───────え、ええっ!?」
「言っとくけど、証拠は挙がってるのよ。フェイトからはお兄様に届けられたなのはのメールを確認させてるし、はやてからは仕事場で仲睦まじくしてるところの目撃証言もあるし、すずかからは電話の盗聴も成功させているわ」
「さ、最後のは聞き捨てならない気がするんだけどっ?!」

 顔を赤くして、周りを見る。しかし、今名前の挙がった友達は前者二人は気まずげに視線を逸らし、後者はにこやかに微笑むだけだった。

「さって、なのは〜」

 ずいっと前に出たアリサがなのはに詰め寄る。座った上体では後ずさる事もなのはは怯えたように尋ねる。

「な、なに?アリサちゃん」
「今まで、尋ねなかったけど一体どういう経緯でお付き合いすることになったか、白状してもらいましょうか」
「は、白状って……」
「ここ最近、あんなに幸せオーラ出しておいてすっとぼけるつもりならこっちにも考えがあるからね」
「考えって………」
「そうねぇ。例えば、お兄様になのはの恥ずかしい話をするとか。例えば、小学二年のとき、体育で〜」
「だ、駄目ー!!それ、クロノ君に言ったら絶対駄目ー!!」

 本気で焦りながら、アリサに懇願する。そのなのはに縋られたアリサは残酷な笑みで告げる。

「じゃ。話しなさいっ♪」
「うう………」

 助けを請うように周りを見る。が、友達はブルータスばかりでアリサを支援するように身を乗り出している。明らかになのはが話すのを待っている。

「告白はどっちから?なんて言われたのかなぁ〜?それとも言ったのかな〜?」
「く、クロノ君から………」
「ふんふん」
「ず、ずっと一緒にいて欲しいって…………」
「きゃー!なにそれ!告白どころかほとんどプロポーズじゃない!?そんなところまでいってたのあんた達!?」
「プ、プロポーズ!?」

 黄色い悲鳴を上げるアリサが言ったことに、なのはの頭は真っ白になる。それを打ち払うようにわたわたと慌てながら言う。

「ち、違うよ!そんなんじゃないよ!」
「何が違うのよ〜?」
「だ、だってだってだってー!!」














「僕となのはは付き合っているのだろうか?」
「別にお付き合いしてるわけじゃないしー!」

奇しくも同時刻。

「「…………はぁーーーーーーーーーーーっ!?」

 素っ頓狂な叫びが異なる次元で同時に上がった。











 日曜日。
 クロノは桜台の山道でなのはを待っていた。なのはとの待ち合わせはここか草原のどちらかだ。なので二人が約束のときに取り決めるのは何時にそこへ行くか。それすらもある程度決まっており、その時間よりやたらと早い時間に来てしまったクロノはそこで思い悩んでいた。
 考えているのは無論、なのはの事。エイミィとの会話で考えるようになった自分達の関係だった。

(果たして、僕達は付き合っているのだろうか?)

 その事をエイミィに聞いたら、胸倉を捕まれて思いっきりガクンガクンと揺さぶられた。そのせいでその時は脳がシェイクされ、深く考えることが出来なかったが、なのはと会う今日この時になっても、まだ思い悩んでいた。
 確かになのはには一緒にいて欲しいと約束した。だが、それは男女の関係でという意味ではない。ではなんと言えばいいのか。強いて言うなら関係の在り方。家族のように最も近くて親愛があり、ずっと離れることのない存在でいて欲しいと言った所か。
 では、なのはの事を女の子として見た事がないのかと聞かれればそんなことはない。どんな相手の事でも理解しようとする優しさを持っているし、自分の意志を突き通そうとする強さもある。戦いの時の凛々しい顔はこっちも勇気付けられる程だ。そんなところがあると思えば、年相応に恥ずかしがるところもあり、そんな所を見ると胸を鷲掴みにされたような感覚に負われる。そんな時の顔や、はにかむように笑った時の顔は脳天直撃と言ったところだ。
 考えれば、元々顔立ちにしろ性格にしろ自分の好みの直球ど真ん中ではないか。頑固すぎるとか無茶しすぎると思うこともあるがそれも意志の強さから来るもの。彼女のことを嫌いになる要素には成り得ない。恋人としてはこれ以上ないくらいの相手である。
 そんな相手に『ずっといて欲しい』と約束した。その約束をただそれだけの感情でそう言ったのだろうか。否、そんな事はないだろう。
 つまり。

「そうか。僕はなのはが好きだったのか」

 ぽんと相槌を打って、クロノはようやくその結論に至った。

「……………………………………………………………………………………………」

 クロノの脳内で雷鳴が鳴り響き、脳天から足の指先まで駆け奔る。自覚したその感情のあまり、ぐらぐらとふらつき揺らぐ思考を抑えるように片手をこめかみに当てた。
 ちょっと待て。誰も急かしていないだろうが待て。そんな自覚もなしに自分はあんなことを言ったのか。よくよく考えれば、あれは告白以外の何物でも無いのではないのだろうか。いや、どんなつもりで言おうがそう取られてもと言うかそう取るのが自然な台詞だぞ。ん、待て?その告白同然の約束をなのはは受け入れてくれたんだよな。つまり、なのはもって、いやいや、問題はなのはどうこうではなく、こんな気持ちのままでどんな顔でなのはと顔を合わせれば。

「クロノ君」

 びくぅっ!!と肩を竦めて、時計の秒針よりも鈍い動作で振り返る。そこには驚いて、目を丸くしたなのはの姿があった。

「どど、どうしたの?」
「いい、いやなんでもないっ」

 なのはの顔がまともに見られず、明後日の方を見ながら答える。ちらりと横目で見るとばっちり目が合い、慌てて目を逸らす。その視界の端でなのはが同じようにしていたのが入ったが、それを気にする余裕はクロノにはなかった。

「………その、行こうか?」
「う、うん…………」

 相手のほうを見ずに、並んで草原に向かう。いつもなら、手を繋いでいくところだが、今はそれが出来ない。ああ、あれも自覚の無い感情のためだったのかと今更気がついた。
 距離は近い、けれど繋がれない指先。そんな付かず離れずの距離で二人は並んで歩いていった。










 草原に着いても二人は無言だった。

「…………」
「…………」

 何か物凄く気まずい雰囲気だ。まるで話すことなどないとばかりに沈黙が続いている。無論、クロノにそんなつもりはない。ただ、何を話せばいいのかわからないのだ。何か話そうと考えるが、自覚した想いのために思考が回らない。こんな状態で口を開けば何を言ってしまうか自分の事ながらわからなかった。
 だからと言ってこのままでいい筈がない。せっかくの休日を気まずい雰囲気のまま過ごす訳にはいかない。なにより、そんな自分の事情で気まずくなっているのはなのはに悪いと思った。

(ええい、ままよっ)

 なんでもいい。とにかく何か話そう。そう決意してクロノは口を開く。

「あの……」
「あ、あのっ」

 申し合わせたかのように見事に声が重なった。同時に相手の方に振り向き、ばっちりと視線が合う。それだけのことでクロノは体温が上がったかのような錯覚を覚えた。

「ななな、なんだ。なのはっ」
「ククク、クロノ君こそどうしたのっ?」
「いやそのなんだ。大したことじゃない。君の方はなんだ?」
「え、えっとっ。その私も大したことじゃないけどっ。あの、その」

 あたふたするなのはにクロノはようやく彼女の様子がどこかおかしい事に気がついた。なんだか、顔が赤いし視線も泳いでいる。それで少し落ち着こうと冷静になったクロノが尋ねる。

「……なのは。どうかしたか?なんだか様子がおかしいが」

 自分の事を棚に上げておいてそう聞くと、なのはは指先をもじもじさせながら俯いたままクロノを見る。脈拍が速くなったような気がするが、それを表に出さないよう努めて再度尋ねた。

「なのは?」
「あの……クロノ君。へ、変なこと聞くけどいいかな?」
「変なこと?」
「だ、駄目かな?」
「……いや、なんだって構わない。言ってみてくれ」
「うん………」

 聞いてもいいと言ったにも関わらず、なのはは口ごもる。しかし、決心がついたようで身体を突き出してそれを尋ねた。

「あの、クロノ君っ」
「な、なんだ?」
「わ、私達ってお付き合いしてるのかな!?」
「───────────」

 今まさに考えていた事を口に出されて、咄嗟に言葉も出なかった。石像のように固まったまま、身を乗り出しているなのはを見る事しか出来ない。

「あぅ…………」

 意を決して尋ねたにも関わらず、自分を見つめるだけのクロノに(なのは視点)なのはは恥ずかしそうに俯いてしまう。それで僅かに冷静になったクロノは、努めて平静を装って聞き返す。

「………どうして、そんな事を?」

 尋ねられたにも関わらず、答えではなく疑問を返す自分に軽い自己嫌悪を覚えつつも自分の気持ちを自覚した矢先ではそう聞かずにはいられなかった。

「えっと、あのね………」

 自分の質問に答えていない事も忘れてなのはは指をモジモジさせながら、その質問に至るまでの経緯を話し出す。

「アリサちゃんにね、クロノ君と付き合いだしたんだよねって言われて、でも私そういう自覚なくて、でも他の人から見たらそう見えるって言われて、それでクロノ君はどう思ってるのかなって思って、それで…………」

 言葉は尻すぼみになっていき、最後の言葉はほとんど聞き取れないほどの小声になり、そこから先の言葉は上目遣いで訴える。

「う、その、ええとだな」

 その視線にクロノは明後日の方を見ながら頭を掻き、頭脳をフル回転させて理路整然とした答えを捻り出そうとする。

「まぁ、なんだ。あの時、ずっと一緒にいて欲しいと言ったのはそういう意味を含めての事ではないが、けどずっと一緒にいると言う事は必然的にそういう事になると思うし、そう見られても当たり前ではある訳なのだが」

 言っていて全く心外な言葉のように思えた。言っている事は間違ってはいないが、何かが決定的にズレているように感じられて仕方ない。

「………そっか」

 そんなクロノの心情に気づく事なく、なのはは少しぼぅとした様子で呟く。

「じゃあ、私達お付き合いしてるのかな?」
「………そ、そう思っていいと思う」

 煮え切らない言葉。はっきりしない態度。どうしようもないもどかしさを感じながら、クロノは想いの篭らない答えを返す。
 けれど、そんな答えにも関わらず。

「そっか………そう、なんだ…………」

 なのははその答えを噛み締めるように呟き。

「…………えへっ」

 ちいさく、喜びを浮かべた笑みを浮かべた。

「───────────」

 その笑みに、クロノはストンと胸の痞えを落とした。

(ああ、そうか───────────)

 じっと自分を見るクロノの視線に、なのはは恥ずかしくなって顔を逸らすように背を向ける。その様に微笑ましくなりながら、それでも都合がいいと助けられた気持ちになる。
 だって、面と向かってでは何も出来ないと思うから。

「なのは」

 背を向けたなのはを後ろから抱きしめる。突然の抱擁になのはが身を硬くしたのが伝わってきたが、それでも逃がさないように腕に力を込める。

「くくく、くろのくん──────?」

 自分の言葉にもどかしさを覚えるのは当然だ。自分の答えがはっきりしないのもしょうがない。だから、答えと言葉に納得する事が出来ないのは当たり前だった。
 だって、自分は。

「好きだ」

 まだ、その想いを伝えていないのだから。

「──────────────────────」

 耳元で囁かれた言葉になのはの身体が僅かに震える。


「…………ぅん」

 それから、ゆっくりと自分を抱くクロノの腕に手を重ねる。

「私も………クロノ君の事…………好き…………」

 その言葉にクロノは小さくうんと頷く。二人とも、恥ずかしくてそれ以上のことが出来そうになかった。
 けれど、離れる事はなく二人はずっとそのままでいた。










「今度、桃子さん達に挨拶に伺おうか」
「ふ、ふぇっ!?」

 夕暮れの山道。なのははギュン!という勢いで手を繋いだ相手に振り返った。

「こういう事は、はっきりさせた方がいいかなと思うんだが」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「それに」
「?」
「君との事で嘘はつきたくない」
「………うん」

 繋いだ手をきゅっ、と少し強く握る。

「でもー……………」
「?」
「お母さん、なんだか無駄に騒ぎそうだねー…………」
「………それは言えている」

 そう言って二人は顔を合わせて苦笑した。どんな事でも同じ気持ちを抱いた事の嬉しさを抱きながら。
 二人並んで、草原からの帰り道を歩いて行った。















 おまけ

「うん、そう…………」

 次の休日。高町家に訪れたクロノはなのはとの交際の旨を高町家の面々に伝えた。
 桃子は、噛み締めるように目を瞑ってそれから満面の笑みを浮かべる。

「うん。クロノ君が相手なら問題なし。桃子さんとしてはオールオッケーよ」
「ありがとうございます」

 娘の交際について喜んでいる事、まったく反発がなかった事にほっとしつつ、クロノは万感を込めて感謝を述べる。

「なのは」
「何、お母さん」

 その満面の笑みを浮かべたまま、桃子は彼氏の出来た娘に振り返る。

「ウェディングケーキは、腕によりをかけるからねっ」
「ウ、ウェっ!?」

 その言葉を皮切りに他の面々も騒ぎ出す。

「結婚式は和式と洋式どっちがいいかな。父さん、両方見たいぞぉ〜」
「ねぇ、恭ちゃん。本当に妹に先をこされちゃったよ?どうしよう………?」
「………さっさと相手を見つけろ」
「孫は何人くらい見れるのかな。桃子さん、今から楽しみっ」

 自分たちを差し置いて、盛り上がる高町家の面々にクロノとなのはは顔を合わせてやれやれと言った顔をする。その顔にちょっと不満そうに桃子が尋ねる。

「あ〜、何二人ともー。その顔はー」
「いえ、ただ」
「思ったとおりになったなー、って思っただけだよー」
「ありゃりゃ」

 これくらいじゃもう慌てないかー。
 そう思いつつ、けれど、不満などまったく抱かずに桃子はこれからの二人の事を思うのであった。
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